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固定・変動 どちらを選ぶ?住宅ローン金利引き上げによる影響について

家を購入する際に、ほとんどの人が利用するのが便利な「住宅ローン」です。その金利の支払いには二つの方法があります。どちらを選べば得策なのでしょうか。ここでは、住宅ローンの「固定金利」と「変動金利」の特徴と、今後の金利の動向についても考えます。

最近の金利状況はどんな感じになっている?

まずはここ数年間の金利について見ていきます。住宅ローンを利用した時には、二つの金利を選択することが出来ます。一つ目は、金利が返済完了まで一切変わらない「固定金利」です。そして二つ目が金利が上下する「変動金利」です。

固定金利について

固定金利のメリットは、金利の変動が一切ないので、総返済額を知りたいときには、計算が簡単にできるというメリットがあります。逆に金利が高いときに借りてしまうと、その高い金利のまま返済を続けていかなければならなくなります。したがって、金利が高いときにはお勧めできないのが固定金利です。固定金利には「全期間固定金利」のほかにも、借り入れから最初の一定期間のみ固定金利にできる「当初固定金利」というものもあります。

最近の固定金利の動向としては、全体的に引き上げられている傾向にあります。その理由の一つとしては202212月に、「10年もの国債」の利回りの引き上げが行われ、それにより固定金利が上昇したのです。住宅ローンの固定金利は、市場の動向や政治情勢に左右される傾向があります。なかでも「10年もの国債」の影響を強く受ける傾向があるのです。この10年もの国債は「個人投資家」などによって日々売買されていますが、売買の決め手となるのが政治情勢や市場の変化です。固定金利はそれにより金利が変動していく特徴があります。

変動金利について

二つ目は「変動金利」のメリットについてです。変動金利を選択するメリットとして低金利が挙げられます。低金利であればあるほど、総返済額も低くなるため人気があるのです。ですが、変動金利は固定金利と違い金利が変動します。そのため、固定金利と違い総返済額の計算がしづらいというデメリットがあります。

なお変動金利は、固定金利と大きく違う点があります。固定金利は10年もの国債の金利によって、金利が決まる特徴がある反面、変動金利は「短期プライムレート」とよばれる金利を基準としているのです。短期プライムレートとは、金融機関が企業に短期的に資金を融資する際の金利の事です。変動金利はこの金利に連動しています。そして、この金利の動向は国の政策等によって変動するため、固定金利のように投資家の動向によるものとは大きく異なるのです。なお、変動金利は固定金利とは違い2023年現在、金利の状態はほぼ「横這い」が続いています。

金利の引き上げで受ける影響と対策について

変動金利は横ばい状態が長らく続いているものの、固定金利は上昇傾向にあるのが現状です。もし金利の引き上げがつづくと住宅ローンにどのような影響が出るのでしょうか。

金利の引き上げでローンの返済額が上昇

金利が引き上げられると一番大きな影響があるのが、ローンの総返済額がアップしてしまうことです。固定金利を選択していれば、その可能性はないものの、仮にこれから近い将来に変動金利が上昇してしまった場合には、変動金利で借りている人たちの返済額が上昇して、家計を圧迫することにもなりかねません。特に元利均等返済で借りている人は、総返済額が元金均等返済で借りている人よりも、多くなる特徴があるため、余計に家計を圧迫することになります。そのような状態になっても、住宅ローンを無事に返済し続けていられれば問題ありません。しかし、返済が滞るようになってしまった場合には、金融機関側から対策を迫られることになりかねません。

対策として繰り上げ返済を考えよう

このような状態に備えて対策を練る必要があります。まずは住宅ローンの「繰り上げ返済」を考えてみましょう。住宅ローンは数十年間にわたって返済し続けます。返済期間をできるだけ長期に設定すれば、毎月の返済額が減るため返済が楽になる傾向がありますが、その分利息分を多く支払う必要があります。それを防ぐためにも繰り上げ返済を利用して、残りの元金を予定よりも早く返してしまえば、後々楽になります。

なお繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。期間短縮型とは、例えばローンの残りが20年と仮定すると、繰り上げ返済をすることによって、期間を15年に短縮するような形です。返済額軽減型とは期間はそのままで、毎月の返済額を減らすことが出来る方法です。家計の毎月の支出を減らしたいのであれば、返済額軽減型を選ぶと家計が楽になります。

家計の見直しで対策を考えよう

毎月支出をしている住宅ローン以外の金額を減らすことにより、家計が楽になります。例えば光熱費や通信費などの「固定費」の見直しは大切です。電力会社も安いところに変更してみたり、通信費も携帯電話会社を変更することにより、毎月の固定費を削減することが出来ます。他にも食費を見直ししてみたり、加入している保険などを見直してみることも大切です。このように無駄を省いた生活をすれば、住宅ローンの金利引き上げの穴埋めをすることが出来るのです。

金利の今後の動向は?

住宅ローンを借りている人にとって、今後の金利の動向は一番気になることでしょう。ですが固定であれ変動であれ、金利が今後どうなっていくのかは誰も予想することが出来ません。ですから、これから住宅ローンを借りる人にとっては、どちらを選択するかは難しい選択でもあります。

固定金利の動向

固定金利は上記のように2023年は上昇しており、今後は住宅ローンを借りる人も変動金利を選択する人が増えるかもしれません。固定金利が上昇した時にローンを組んでしまうと、完済まで高いままの利率で返済を続けることになります。そのような状態でもどうしても固定金利を選択したい人は、余裕のある時に繰り上げ返済を利用して、返済額を減らすなどの対処をするより方法がありません。今後も、固定金利は10年もの国債の動向によって決まっていきます。金利がどうなるかは常にこの動向を注視していけば、金利の判断がつくようになります。

変動金利の動向

 

変動金利は住宅ローン利用者の半数が選択するものですが、固定金利が2023年以降上昇しているため、さらに増加することが予想されます。変動金利はここ十数年間横ばい状態が続いており、安定しているため今後もこの状態が続いていくと予想する人もいます。ですが、このような安定状態にある変動金利も上昇する可能性があります。もしも今後インフレにより物価の上昇が続くと、短期プライムレートの引き上げに踏み切ることもあります。

そうなると安定を続けていた変動金利も上昇する可能性もあるのです。もしもそのような事態になった場合に備えて、住宅ローンの総返済額のシュミレーションなどを行っておくと安心です。もしも金利の上昇で、返済が手に負えないようであれば、繰り上げ返済を利用して、少しでも住宅ローンの負担を減らす努力をしてみましょう。


自分にマッチした返済方法を選ぼう

固定と変動のどちらを選択するかは、ローンを借りた時の状況で判断する必要があります。固定金利が上昇しているのであれば、変動を選んだほうが良いですし、変動金利が不安なのであれば、安定している固定を選べばよいのです。それ以外にも自分にとって、どちらが有利で安心なのかを考えることが大切です。市場の動向意外にも、自分に合っている方法をライフプランなども作成したりして選んだほうが良いのです。

 

監修 大森 英則氏

FP相談室/ファイナンシャルプランナー

主に個人のお客様のお金にまつわる様々なご相談(教育費・住宅費・老後費用など)を承り、お客様の紹介を中心に活動させていただいてます。具体的な事例を交えたわかりやすいご案内が特徴で、企業様や市町村にてセミナーを実施。また同業の営業の方の研修も行っています。金融資格だけでなく、ピンクリボンアドバイザー、認知症介助士、住宅ローンアドバイザーなどの資格を持つ異色のファイナンシャルプランナーです。

https://oshiete.chunichi.co.jp/owari/pro/82/

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