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頭金なしで住宅ローンを組める?|メリット・デメリットを解説!

住宅ローンの頭金は、借入金額を抑えるための自己資金で、物件価格の2割前後が平均的です。頭金なしは、金融機関の審査が厳しくなります。メリットは物件購入の早期化など、デメリットは利息の返済負担の増加などが挙げられます。返済不能の可能性や借入金額が高くなった影響には注意が必要です。

そもそも頭金なしで住宅ローンは組めるのか?

住宅ローンを組むときには、基本的に頭金が必要だと思っている人は少なくないでしょう。そこで頭金とは何か、いくら必要なのかという基本的な情報を確認しつつ、頭金なしでの住宅ローンを組めるのかどうかを解説します。

頭金ってどんなもの?

頭金とは、住宅ローン等の借入をせずに用意した自己資金のことです。気に入った物件の購入に必要な資金を、すべて住宅ローンで調達するのではなく、一部は自己資金にしておくことで借入金額を減らすことができます。住宅ローンは、数十年にわたって返済していくものです。頭金を支払うことで借入金額が小さくなれば、利息が減るので総利息額と元金の合計である総返済額を抑えられます。逆に頭金なしで住宅ローンを組むことは、フルローンと呼びます。

頭金の平均金額はどのくらい?

住宅ローンを組むときに用意しておく頭金の平均は、物件価格の1割から2割程度とされています。3000万円の物件であれば、300万円~600万円が目安です。余裕があれば、平均以上に頭金を用意することもできるでしょうが、家を購入した時点での収入がそれほど多くなかったら大きな負担となるでしょうし、また年収によっては、残債に応じた税金の控除の恩恵が小さくなります。平均以上に頭金を用意するのかどうかは、あらゆる面を考慮した上で判断した方が良いでしょう。

頭金なしでも住宅ローンは組めるが、金融機関の審査が厳しい場合も

利用する金融機関によっては、頭金なしでも住宅ローンを組むことは可能です。しかしながら、頭金を用意しないということは、それだけ利息の負担が増えてしまうので、結果として滞納や返済不能のリスクが生じます。また、頭金を用意しないと、マイホームを購入するために計画的な準備をしていないように見られてしまいます。住宅ローンの返済において、計画性は重要です。計画性がない人は、返済のことを考えずに浪費をしてしまい滞納や返済不能のリスクが高まります。

滞納や返済不能に備えて、住宅ローンを組むときに設定するものが抵当権です。購入した物件に抵当権が設定されていれば、滞納や返済不能になったとしても物件の売却益で住宅ローンの残債を支払うことになります。しかし、借入額が大きくなると、物件の売却益よりも住宅ローンの残債の方が大きくなる可能性も否定できません。もし、物件を売却しても住宅ローンの残債を支払えず、契約者が自己破産をしてこれ以上の返済を期待できないとなれば、金融機関は大きな損失を被ることになるでしょう。

以上のように、頭金なしの住宅ローンというのは、金融機関にとって多くのリスクを伴う契約です。そのため、金融機関の審査が頭金ありの場合に比べて厳しくなることもありえます。返済能力に問題がなかったとしても、金融機関から信用を得られず審査落ちとなる可能性も覚悟しなければいけません。

頭金なしで住宅ローンを組む場合のメリット・デメリット

頭金なしで住宅ローンを組むということには、メリットもあればデメリットも存在します。頭金なしで住宅ローンを組む場合に、メリットとデメリットを理解した上で最終な判断ができるように詳しく解説をしていきます。

メリット

頭金なしで住宅ローンを組むメリットは、マイホーム購入のタイミングが早まることです。貯金をして頭金を用意するとなれば、マイホーム購入までに何年もかかってしまうでしょう。その間に、理想的な物件を見つけたとしても、先に他の人に買われてしまう可能性が高いです。頭金で住宅ローンを組めれば、即座にマイホーム購入の手続きに入ることができます。

また、早めにマイホームを手に入れることで家賃の支払いをしなくても良くなるというのもメリットの一つです。賃貸物件の家賃は、どれだけ払っても物件が自分のものになるわけではありません。最終的なリターンのない掛け捨てです。一方で住宅ローンは、返済するほど残債が減ります。住宅ローンは完済すれば金融機関の設定した抵当権も解除され、名実ともにマイホームを自分のものにできます。稼いだお金の使い道として、家賃を支払うよりも住宅ローンの返済に充てる方が恩恵が大きいことがわかるでしょう。

 

貯蓄を別の用途に使えるというメリットもあります。例えば、子供がいる世帯ならば、子供の食費や衣服等を購入するための養育費、学校や塾に支払う教育費といったものが必要となるでしょう。貯蓄を頭金ではなく、養育費・教育費に回すことで子供を不自由のない生活を送らせることができます。別の用途には、不測の事態というのもあります。家族が事故や病気になったり、失業したりしたときには、当面の生活費に充てる資金が必要です。頭金を支払って手持ちのお金がなくなれば、生活費のために借金をすることになります。現在は何も問題がなかったとしても、将来のことは誰もわかりません。将来に不安を感じるならば、頭金を払わないというのも選択肢の一つです。

 

頭金なしの住宅ローンを組むメリットには、住宅ローン控除の恩恵が大きくなるということがあります。住宅ローン控除は、住宅ローンの残債に応じて所得税が控除される制度(所得税で控除できなかった分は住民税が控除される)です。頭金なしであれば、その分だけ残債が増えるので更に多くの税額控除を受けられます。なお、所得が低い場合は、控除される所得税・住民税も少ないので住宅ローン控除の恩恵をあまり期待できません。

デメリット

頭金なしで住宅ローンを組むデメリットは、まず金融機関の審査が厳しくなることで誰でも気軽に借りられないことです。理想的な物件が見つかり購入したいと思っても、審査に通らなければ話になりません。加えて、借入金額が高くなることで、利息の返済負担が増え返済期間も長期化するでしょう。金融機関によっては、頭金ありの住宅ローンよりも頭金なしの住宅ローンの方が、高い金利を設定するので、さらに利息の返済負担が重くなります。

頭金なしで住宅ローンを組む場合の注意点

頭金なしで住宅ローンを組む場合に、注意すべき点もあります。後で取り返しの付かない事態に陥ることがないように、代表的な注意点を解説します。

返済不能になる可能性があるので注意しよう!

住宅ローンの返済負担率は、手取りの年収の2025%以内であれば苦しい生活を送らずに済むとされています。頭金を支払わない場合、借入金額が増えることで上記の返済負担率を超える可能性があるので注意しなければいけません。返済負担率が増えれば、生活費が圧迫されて食費や家賃を削らなければならないでしょう。生活費を限界まで削っても、返済が追いつかなくなってしまったら、返済不能になる可能性があるので注意しなければいけません。返済不能を回避したいのであれば、頭金なしで住宅ローンを組む前に、返済負担率を計算しておき無理なく返済ができるのかを確認した方が良いです。

借入金額が高くなるケースがあるので注意しよう!

頭金なしで住宅ローンを組むと、借入金額が高くなることには気をつけなければいけません。借入金額が高くなるとどうなるのかを例で見ていきましょう。3000万円の物件を購入するとき、年利1.2%の固定金利で、35年の返済期間を設定したとして、総返済額は36,754,301円になります。同じ条件で頭金600万円を支払えば借入金額2400万円となり、総返済額は29,403,360円です。単純な計算ではありますが、頭金なしで住宅ローンを組んだときは借入金額とともに総返済額が高くなることがわかるでしょう。
実際には、変動金利で金利が上昇することがありますし、頭金ありの住宅ローンは金融機関にとってリスクが大きいので高い金利が設定されることもあります。借入金額の大きい頭金なしの住宅ローンは、そういった要因の影響を受けやすくなるので注意しなければいけません。頭金なしの住宅ローンは、そういったことを踏まえて長期的な視点で返済の負担がどの程度なのかを確認しておくことをおすすめします。

頭金なしで住宅ローンを組むことが最善の選択なのか

借入金額を減らす頭金なしで住宅ローンを組む場合は、欲しい物件を即座に購入できる、賃貸物件に家賃を支払わなくても済むなどのメリットを得られます。しかしながら、頭金なしであるため金融機関の審査が厳しくなる、利息の返済負担が増すなどのデメリットを覚悟しなければいけません。加えて、生活費が圧迫されて返済不能になる可能性がありますし、頭金ありの住宅ローンよりも借入金額が高くなることで高い金利を設定されたときの影響が大きくなることに注意する必要があります。メリット・デメリット、注意点をすべて理解した上で、頭金なしが自分にとって最善な選択かどうかを考えてみましょう。

監修 大森 英則氏

FP相談室/ファイナンシャルプランナー

主に個人のお客様のお金にまつわる様々なご相談(教育費・住宅費・老後費用など)を承り、お客様の紹介を中心に活動させていただいてます。具体的な事例を交えたわかりやすいご案内が特徴で、企業様や市町村にてセミナーを実施。また同業の営業の方の研修も行っています。金融資格だけでなく、ピンクリボンアドバイザー、認知症介助士、住宅ローンアドバイザーなどの資格を持つ異色のファイナンシャルプランナーです。

https://oshiete.chunichi.co.jp/owari/pro/82/

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