家づくり

インナーバルコニーってなに?|メリット・デメリットを解説!

理想の家づくりを実現するアプローチはさまざまですが、インナーバルコニーに注目して家づくりを進める方もいらっしゃいます。インナーバルコニーは住宅と屋外を繋ぐ部分として生活空間の可能性を広げてくれます。ここでは、インナーバルコニーのメリットやデメリットを中心に掘り下げてみましょう。

インナーバルコニーについて

インナーバルコニーという言葉を見聞きしたことはあっても、具体的にどのような設備を指すのか分からないという人もいらっしゃるでしょう。まずは、インナーバルコニーについて押さえておきたい予備知識を解説します。

インナーバルコニーの特徴

インナーバルコニーとは、建物の内側に引っ込むような形で設置されるバルコニーのこと。上部に屋根が付いている点が大きな特徴であり、基本的には住宅の2階以上に設置されます。広さについて明確な基準は設けられていませんが、一般的には90cm以上の奥行きがあって多目的に利用することができます。

通常のバルコニーとの違いは?

住宅に設けられている一般的なバルコニーは「屋根が付いていない」という点でインナーバルコニーと大きく異なります。比較的広いスペースであるという点は共通なので利用用途は似ていますが、屋根の有無によって居心地や使い勝手には違いが生じると言えるでしょう。また、インナーバルコニーが建物の内側へ収められるようにつくられるのに対して、通常のバルコニーは建物からせり出すように設置されます。住宅の外観にも大きく影響するので、デザインにこだわる場合は注意しておきましょう。

ベランダとの違いについて

ベランダの定義は「屋根が付いていて建物の外側へ張り出している屋外スペース」であり、インナーバルコニーとの違いは「建物からせり出しているか否か」となります。ベランダはマンションやアパートなどの集合住宅によく見られ、屋根部分が上の階層のベランダになっていることが多いです。


インナーバルコニーのメリット・デメリットについて

インナーバルコニーのある家づくり・住宅選びで後悔しないためには、メリットとデメリットの双方についてしっかり理解を深めておくことが大切です。以下に挙げるメリットとデメリットを参考に、どちらを優先すべきか検討してみてくださいね。

インナーバルコニーのメリット

インナーバルコニーは屋根が付いているという構造上、「天気の影響を受けにくい」という点が大きなメリット。雨の日でも屋外に洗濯物を干せるので、屋内に生乾きのにおいが漂う心配がありません。逆に言えば直射日光が差し込みにくいので、紫外線が気になる夏場でも子どもやペットの遊び場としてインナーバルコニーを活用できます。

2つ目のメリットは「生活空間を拡張できる」ということです。インナーバルコニーは建物の内側へ引っ込むように設置されるため、リビングからひと続きの空間として利用できます。外の明かりや風を感じられるので、家事や在宅ワークの合間にちょっとリフレッシュしたい場合も活躍するでしょう。BBQや焼肉の調理をインナーバルコニーで行えば、部屋ににおいが付いたり煙が充満したりといったこともありません。擬似的にリビングが拡張することで、QOLの向上やアクティビティのバラエティ拡大が期待できそうです。


先に述べた通り、一般的にインナーバルコニーは2階以上に設置され屋内に引っ込む形でつくられます。したがって道路を歩く通行人からの視線が届きにくく、「屋外ながらもある程度プライベート性を担保できる」点は特有のメリットです。リクライニングチェアや大きめのソファを置いてくつろぐ、作業に集中できるガーデニングスペースをつくる、夏場に子ども用のプールを出すなど人目を気にせずスペースを有効活用できるでしょう。

インナーバルコニーのデメリット

インナーバルコニーのデメリットとしては「固定資産税の課税対象」であることが挙げられます。通常のバルコニーやベランダは建物からせり出しているため、奥行きを確保するには限界があると言えるでしょう。固定資産税の計算では「外壁面からの出幅が2m以下の部分は対象としない」と定められており、多くの場合バルコニーやベランダはこの条件に当てはまります。これに対してインナーバルコニーは建物の内側へ引っ込んでいる形状なので、延べ床面積としてカウントされて固定資産税がかかるケースが多いのです。予期せぬ出費を避けるためにも、インナーバルコニー部分の課税については家づくりの段階から業者に確認しておきましょう。

場合によっては「インナーバルコニーの存在が間取りを制限する」という点もデメリットになり得ます。住宅を建てる上では延べ床面積に対する敷地面積の割合である「容積率」の上限を厳守する必要があります。インナーバルコニーは延べ床面積にカウントされるため、容積率を守るために他の部屋の広さを犠牲にしなければならないケースも珍しくありません。また、インナーバルコニーの屋根を支えるためには柱や壁が必要になり、設計の関係で理想とする間取りが実現できない可能性も出てきます。柔軟に対応するためには、予めいくつかの間取りパターンをプランニングしておくことをおすすめします。

インナーバルコニーをつくる上での注意点

インナーバルコニー付きマイホームを手に入れても、実際に住んでみたら意外な落とし穴に気付くというケースもあります。ここからはインナーバルコニーの注意点を述べていくので、予期せぬトラブルの防止に役立ててください。

周りの建物からの視線を考える

インナーバルコニーは道路からの視線を遮りやすい一方で、同じくらいの高さにある建物からの視線には無防備な状態です。家を建てた時点では周りに建物がなくても、将来は建築される可能性もあります。2階以上の高さにある視線を遮ってプライバシーを守るためには、目隠しとして利用できるアイテムをインナーバルコニーに備えておきましょう。例えば、手頃なものとしてすだれやガーデニング用のラティス、風量・光量の調整も兼ねるルーバーなどが人気です。手すり壁を高くすれば設計段階から外部からの視線を遮ることができますが、インナーバルコニーの魅力である開放感を損なう可能性もあるので慎重に検討しましょう。

雨漏りのリスクがある場合も

インナーバルコニーは天気の影響を受けにくいものの、雨水を完全に弾くことはできません。室内との距離が近いため、見えない場所に溜まった水によって雨漏りが発生するリスクがある点にも注意しておきましょう。雨漏り予防には定期的なメンテナンスが効果的なので、防水層や排水口の補修・トップコートの塗り直し・外壁のコーキングなどは様子を見ながら数年に1度くらいの頻度で業者へ依頼しましょう。排水口を適宜清掃しておくだけでも各部分の寿命を延ばすことができますよ。

インナーバルコニーにした面が暗くなる可能性も?

屋根が付いている点はインナーバルコニーのメリットですが、その反面で室内への採光性が低下する可能性があるので要注意と言えるでしょう。インナーバルコニーをどの方角に設置するかにもよりますが、一般的には天窓や高窓を設置して対処することが多いです。インナーバルコニーからの採光が難しい場合は、隣接する部屋で窓の配置を工夫してみてください。

インナーバルコニーは開放感と多目的性が魅力!注意点を把握して有効活用しよう

インナーバルコニーは室内と屋外を結ぶ生活空間として、さまざまな活用方法がある魅力的な設備です。独特の開放感は暮らしにゆとりや潤いを与えてくれるので、人気が高まっているのも頷けるでしょう。一方で、同じ高度からの視線・雨漏り・日当たりなど、快適に過ごすために注意しておきたいポイントがあるのも事実です。間取りや税金に関するデメリットも加味して、インナーバルコニーの設置を検討してはいかがでしょうか。

監修 野村 綾乃氏

株式会社アンズコミュニケーションズ 代表取締役

大手証券会社のOL を経てラジオ業界に転身。ラジオ番組パーソナリティに。現在の担当番組は、『笠原将弘の賛否両論/東海ラジオ』『市政情報/エフエム岡崎』。番組構成作家を行いながら、住宅ライターとしても住宅系雑誌・WEBサイトでのコラム・取材記事の執筆、監修、講師で活躍中。

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