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災害に強い家はどんな家!?失敗しないための家づくりのヒント【後編】
目次
1.災害に強い家の間取りと対策
地球温暖化の影響もあり、年々災害の規模が大きくなってきている昨今、家を建てる際は災害対策を意識した家づくりが大切になってきています。ここでは主な災害と考えられる地震・水害を考えた時の家づくりはどういったものなのかを解説していきます。
地震に強い間取り・構造
一般的には耐力壁という壁が多いほど地震には強くなります。したがって大きな吹抜けの間取りや柱・壁の少ない空間は耐震性だけを見た時には不利と言えますが、しっかりと構造計算された間取りであれば十分な耐震性能があり問題はないでしょう。
耐震性を考えるなら耐力壁がバランスよく配置された間取りが好ましいです。
阪神淡路大震災では、建物の倒壊だけでなく、家具の転倒などによる圧死や怪我の人的被害も多く発生しました。
収納スペースはなるべく住宅に造り付けて、大型家具の設置を避けたいところです。冷蔵庫や食器棚は倒れると中身が散らかって避難経路を塞いでしまうことがあります。
緊急時に速やかに外に避難できるように家具や家電の位置に注意しましょう。
水害に強い間取り・構造
水害に強い間取りは、1階が浸水した場合でも2階で通常に近い暮らしが継続できるかがポイントとなります。
2階にキッチンやリビングを造ると1階で床上浸水をしてしまっても2階で通常に近い暮らしを送ることができます。
また3階建ての場合でも1階をガレージとして使い、2階と3階を居住スペースとするのも水害に対しては有効です。
水害では家の電気系統が水に浸かってしまうと電気が使えなくなるだけでなく、漏電火災につながる可能性もあります。
コンセントやエアコンの室外機はできるだけ高い位置に設置すると安心ですし、ブレーカーは1階と2階に別々で設置して電気系統を分けるのも有効です。
ライフラインや備蓄の重要性
大地震などの大規模災害が起きると停電や断水でエネルギーの供給が止まり、生活に必要なライフラインが断たれてしまいます。
例えば、首都直下型地震が起きた場合、ライフラインの復旧には、ガスが55日、上水道30日、電気が6日かかるとされています。電気は比較的復旧が早いですが、上水道は1ヶ月前後、ガスは2ヶ月ほど使用できなくなってしまうのです。
災害時における自宅での水の確保
上水道の復旧には1ヶ月ほどかかり、その期間は使用できないと想定します。
飲料水はウォーターサーバーや給水サービス、浄水器で確保しつつ、同時に生活用水を確保する必要があります。
多くの水が必要になりますので、間取りにパントリーなどがあると便利です。
自治体では、1人あたりの飲料水を1日あたり3リットル、それを3日から7日分を最低限人数分確保するよう推奨しています。
生活用水では、飲料水とは別に1日あたり3リットルの備蓄を最低限用意するように求めています。通常の生活ではシャワーを3分浴びるのに約36リットル使われ、入浴には1回で200リットル弱もの水を使用しています。
たとえ災害時に備えていてもかなり節約して使わなければなりません。飲料水にはペットボトルの水が常温で長期間にわたって保存できるので適しています。
保存期限を考えた時にペットボトルに記載されている賞味期限を目安にする人も多いですが、水はある程度賞味期限が切れていても飲めなくなるものではありません。
ミネラルウォーターに記載されている賞味期限の根拠は品質保持ではなく、成分表示量の保持が可能な期間が記載されています。
ペットボトルの素材はわずかに空気を通すので時間が経つにつれて中の水が蒸発し、量が減ってしまいます。量が減ったものを販売すると計量法違反となるので、内容量が確保できる期間を賞味期限としているのです。ただ、賞味期限も気になる方は、備蓄用の長期間保存できる水を選びましょう。そして開封してしまった水は早めに飲むことをおすすめします。
目安は500ミリリットルのペットボトルはその日の内に、1リットル以上のペットボトルは2~3日を目安に使い切りましょう。水を飲む際には直接口を付けてしまうと傷みが早くなってしまうので、コップなどを使って直接口を付けないようにすると安全です。
災害時のガスの停止に備える
ガスが復旧するまではガスを使用できないのでお湯を沸かすことができなくなります。
災害時にガスを使用するにはカセットコンロの備蓄が有効です。
カセットコンロがあればガスが断たれていてもお湯を沸かすことができ料理などに活用できます。なお、カセットコンロに使われるカセットボンベには使用期限の目安があります。ガス漏れを防ぐゴム製品が使われており、使用する頻度にかかわらず経年劣化していくので注意が必要です。
しまったままにしていて緊急時に使えないということがないように定期的にカセットボンベを使用し、新しいものと交換する「ローリングストック法」を使いましょう。
ローリングストック法なら、いざという時に期限が大幅に過ぎていて使えず捨てなければいけない…という失敗もなくなるので賢く備蓄できます。
カセットボンベの使用期限は製造から約7年、カセットコンロは製造から約10年が買い換えの時期になります。
1週間分のカセットボンベを備蓄する目安は、大人2人分で冬の場合は約9本、それ以外の季節には約6本の備蓄をおすすめします。
また電気給湯器の「エコキュート」が家にあれば、ガスが止まっても電気が止まっていなければお湯を沸かすことができます。
エコキュートは個別に貯水タンクを内蔵しているので、万が一の際には生活用水として使用することもできます。容量が370リットルのモデルであれば、4人家族の推奨量の30日分に当たり、普段通りの使い方をしても2日分の生活用水を補うことができます。
災害時の停電時に備えて電気の確保を!
停電時にはテレビからの情報やスマホの充電もできなくなるので災害情報を得にくくなってしまいます。
被害状況の確認やどこで支援が受けられるかの支援情報を得られるように準備しましょう。
情報を得るには電池で使えるラジオをおすすめします。
手回し式のラジオであれば電池の必要がないので安心です。災害時には充電式の電池やモバイルバッテリーがあると便利です。ソーラー式のバッテリーであれば太陽光で充電できるため停電時に活躍します。
また家庭用蓄電池があれば、モバイルバッテリーよりもさらに多くの電気を蓄電しておけます。高額にはなりますが、停電時でも多くの家電を使うことができ、非常時の生活には心強い助けとなります。
家庭用蓄電池は通常時でも使うことができ、夜間の安い電力を蓄電池に貯めて昼間は貯めた電気を使う生活を送れば、毎月の電気代をお得にできて節約につながります。
さらに太陽光発電と組み合わせれば備えとしてのメリットが大きくなります。
蓄電池があれば太陽光で発電した電気を貯めることができるので、停電時にも昼夜を問わず電気が使えます。
繰り返し使えるので電気の復旧が長引いたとしても電気を発電して使用できて緊急時には大いに役に立つでしょう。
緊急時でない時には太陽光で発電した電気を売る「売電」もできるので活用の幅が広い設備になります。
家庭用蓄電池と同様に、電気で動く電気自動車も災害時には活用できます。
電気自動車は非常用電源としても使うことができ、走行するために貯めていた電気を家庭用の電気として供給することができます。ただ、普段から電気自動車を使っていても緊急時の利用方法が分からないといけないので、マニュアルを参考にして災害時でも使えるように備えておきましょう。
2.万が一に備えて避難経路の確認と避難グッズを用意する
大地震では家具が転倒し、避難経路が塞がれて外に出ることができず家の倒壊に巻き込まれてしまうことがありました。
ですから、避難経路をあらかじめ確保することはとても重要です。
家具は地震時に倒れてくると想定して転倒防止策を講じておきましょう。
転倒しないよう壁に固定し、寝室や子ども部屋などの居住スペースにはできる限り家具を置かないように心がけてください。
家具を置く場合にはなるべく背の低い家具を選び、倒れてしまった場合も入口を塞がないように家具の向きや配置を工夫しましょう。そして、地震などの災害が起きたとしても慌てず避難するために、事前に自治体の避難場所を確認しておきましょう。
地震や津波、台風などの災害の種類によって避難場所が変わる場合があります。また、手に届く位置にホイッスルや懐中電灯を用意しておきましょう。
ホイッスルは家が倒壊して埋まっても自分の存在を救急隊に知らせることができ、懐中電灯は停電時の暗い中でも足下を照らして避難することができます。
食料品、生活必需品
食料品は大規模災害の際には1週間分の備蓄がある状態が望ましいとされています。食料としてはアルファ米、ビスケット、板チョコなどを準備しておきましょう。
災害時にあると便利なもので工夫しましょう
災害時に重宝するのがラップです。
食事を摂る際には紙皿を使うことが多いですが、避難生活が長引くと紙皿が足りなくなってしまいます。
そこでラップを張れば何度でも紙皿を使うことができます。
傷の応急処置にも役立ち、包帯や三角巾としても使用できます。さらに体に巻くことで防寒もできるので、いろいろなシーンで役に立ちます。ブルーシートもあると便利で、避難所内では仕切りとして使うことができ、汚れ防止、防寒にも使えます。防水効果もあるので傘の代わりにもなります。
衛生用品
過去の災害で避難所になく困ったものとして多いのが衛生用品です。
特に重要度の高い衛生用品を確認して防災リュックに入れておくことをおすすめします。
衛生用品には生理用品、ウェットティッシュ、簡易トイレ、消毒液、歯ブラシなどを用意しましょう。
ガソリンを満タンにしておく
地震などの災害が発生するとガソリンスタンドに車の長い列ができてしまいます。
場合によってはガソリンスタンド自体が使えなくなることも。
車は人や物を運ぶだけでなく、災害時には冷暖房や電源としても使用できます。
普段からガソリンを満タンにするように心がけ、半分ほどに減ったら面倒でもこまめに給油するようにしては如何でしょうか。
災害時に車が使えるのはとても心強いものです。
アウトドア用品
テント、寝袋、バーベキューセットなどのアウトドア用品は長期避難に役立ちます。
テントは避難所内で使用すると周囲の視線が遮断できますし、バーベキューセットは食材が手に入るようになれば料理をする時に役立ちます。
3.災害に強い家のまとめ
この記事では災害に強い家づくりを構造や間取りから紹介しました。
家は一生をともにするパートナーでもあります。たとえ大地震などの大規模災害があったとしても壊れない家を目指しましょう。
災害に強い家は各住宅会社も力を入れていますので、設計段階から積極的に相談したいところです。
土地や家は人生で最も高額なお買いものになることから利便性や予算を重視して考えられがちですが、被災して住めなくなっては元も子もありません。
南海トラフ地震も懸念される昨今、地震大国である日本ではいつ大きな地震が起きても不思議ではありません。過去にあった地震を参考に安全な家づくりをしましょう。また、被災した時のことを考えて賢く備蓄をして災害に備えたいものです。
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監修 野村綾乃氏
株式会社アンズコミュニケーションズ 代表取締役
大手証券会社のOL を経てラジオ業界に転身。ラジオ番組パーソナリティに。現在の担当番組は、『笠原将弘の賛否両論/東海ラジオ』『市政情報/エフエム岡崎』。番組構成作家を行いながら、住宅ライターとしても住宅系雑誌・WEBサイトでのコラム・取材記事の執筆、監修、講師で活躍中。