家づくり

地盤改良工事とは?地盤改良工事のメリット・デメリットを解説します

建物を建てるときには地盤調査が必要です。
調査をして地盤が弱かったときに、地盤を補強して安全な状態にする地盤改良工事をしなくてはいけません。
地盤改良工事は、その状況によって適切な工事があり、その工事方法によって特徴が異なります。
今回は、地盤改良工事の特徴や、改良工事のメリット・デメリットについてご紹介します。

地盤改良工事とその種類とは?

地盤改良工事とは、建物や構造物の基礎となる地盤の強度や安定性を向上させるための工事です。地盤が弱いと、沈下やひび割れ、崩壊などのリスクが高まります。地盤改良工事の種類は、大きく分けて3つ。

1.  表層改良工法

2.  柱状改良工法

3.  小口径鋼管杭工法

それぞれの特徴について解説します。

表層改良工法

表層改良工法とは、土壌にセメントや石灰などの固化材を混ぜ込み、地盤を強化する方法です。地表から2m以内の浅いときに使われる方法で、施工は比較的短期間で完了します。施工後は地盤の耐久性が向上し、長期的な安定と建設現場で広く採用されています。

柱状改良工法

柱状改良工法とは、土の中にセメントや石灰を混ぜて柱状の固化体を形成し、地盤を強化する方法です。地中に穴を開けて、28m程度の深さまで対応できます。円柱状の硬い地盤により強化できる仕組みで、建物や構造物の沈下を防ぎ、耐震性を高めます。また、施工時の振動や騒音が少ないため、周辺環境への影響が少ないのも特徴です。

小口径鋼管杭工法

小口径鋼管杭工法とは、小さい鋼管を用いて地盤に杭を打ち込み地盤強化をする方法です。地中30mの深さまで対応可能で、狭い場所や周囲の条件が厳しい現場でも施工ができます。鋼管を地面に垂直に挿入し、周囲の土を圧密させることで杭が地盤に固定。都市部の建設現場や狭小地に向いており、住宅や商業施設などさまざまな用途で利用されています。短期間の施工と経済性の高さから、注目度の高い手法です。

地盤改良工事のメリット・デメリット

地盤改良工事で使われる3つの手法は、それぞれで特徴が異なり、メリットやデメリットもさまざまです。どのような地盤改良工事が向いているのか、最適な方法を選びましょう。

表層改良工法のメリット・デメリット

【表層改良工法のメリット】

1.工事期間の短さ: 改良が短いため工事全体のスケジュールが短縮される。

2.コスパが高い:施工費用が抑えて施工ができる。

3.施工しやすい: 既存の土のまま施工がしやすい。

4.周辺への影響が少ない:振動や騒音が少なく、周辺環境への影響が少ない。

【表層改良工法のデメリット】

1.  深い場所には向いていない: 浅い部分の地盤改良のため、深い部分の改良には不向き。

2.  安定性:環境や使用条件により、長期間になると効果が低下することがある。

3.  材料の選択: 使用する固化材によって性能が変わる。

柱状改良工法のメリット・デメリット

【柱状改良工法のメリット】

1. 地盤深くまで改良可能:建物の荷重をしっかり支え、沈下リスクを低減できる。

2.耐震性に効果的:液状化対策に効果的で、地震に対する耐性が向上。

3.適応性:複雑な地形でも施工可能。

4.工事期間の短さ: 改良が短いため工事全体のスケジュールが短縮される。

【柱状改良工法のデメリット】

1.費用:材料や設備のコストが高くなる場合があり、表層改良工法と比べると初期投資がかさむことがある。

2. 地盤の種類に制限:原状回復がしにくい方法なので、土地の売却をするときに価格が落ちる可能性がある。

3.狭小地では搬入できないケースもある。

小口径鋼管杭工法のメリット・デメリット

【小口径鋼管杭工法のメリット】

1.     強度が高い:3階建てなど重量がある場合でも可能

2.     狭い場所の施工が可能: 小型重機なので狭い場所でも使用できる。

3.     環境に優しい:セメントを使用しないので、六価クロムのリスクがない。

4.     工期が早い:短いスケジュールで工事が完了する。

【小口径鋼管杭工法のデメリット】

1.     騒音・振動:地盤の深い部分まで作業するので、周囲に騒音や振動で迷惑を掛ける可能性がある。

2.     施工できない場合がある:軟弱地盤の下に硬質な支持層がなければ小口径鋼管杭工法はできません。

3.     コストが高い:地盤の中に鋼管杭を入れるので、土地を売却するときに撤去しなくてはならないケースもある。

地盤改良工事はどんなときに必要?

地盤改良工事が必要かどうかは、地盤調査の結果や周辺環境によって決まります。平成12年より前は、地盤調査が義務化されていなかったのですが、地盤沈下などの増加が問題となり、建築基準法で義務化となりました。地盤改良工事が必要になる基準は2つ。

1.     地面が建物を支える強さである地耐力が、2030KN/㎡以下と判断されたケース

2.     過去に陥没があった場所、その周辺が埋め立て地や盛り土でつくられた土地の場合

地盤調査は後々、大きなトラブルにならないためにも必ず必要な工程です。土地を購入する前に、事前に地盤調査ができるよう交渉しましょう。

地盤改良工事にかかる費用目安

それぞれの工法によって、工期や費用が異なります。地域や広さ、杭の数、深さによってもさまざまですが、目安となる基準を覚えておきましょう。

表層改良工法

工期は12日程度で済むことが多く、おおよその費用は30万円~50万円前後が目安になります。

柱状改良工法

杭を30本程度使用する場合の工期は23日程度で完了することが多いです。おおよその費用は数十万円~100万円前後が目安になります。

小口径鋼管杭工法

通常の環境であれば12日程度の工事で済むことが多いです。おおよその費用は100万円~200万円前後が目安になります。

地盤改良工事が必要なさそうな土地を選ぶポイント

地盤改良工事は、大きな費用がかかることもあるので、なるべく改良工事が必要なさそうな土地を選ぶことが1つのポイントです。考えられる方法としては、ハザードマップで液状化のリスクや、土地の調査結果を調べてみるのも有効な方法になります。または、希望している土地の近隣に住んでいる人に、土地の状態やこれまでのトラブルなどを確認するのも良い方法です。ただし、土地の状況は23件離れているだけで状態が変わっていることも珍しくありません。事前に100%断定することはできませんが、ある程度見込みをつけておくことと、改良工事になっても対応できるように予算を準備しておくことも大切です。

地盤改良工事の注意点

地盤改良工事は専門的でわからないことも多いですが、業者に任せきりにせず、注意点は抑えておきましょう。大まかな注意点は3つあります。

・工事内容や工程をわかりやすく説明してもらう

・工事完了後、地盤改良工事報告書を発行してもらう

・残った土の処理をどうするか決めておく

見積もり依頼から完了まで、どのような工程で進むのか、その工程を知ることも大切です。また、よく忘れがちなのが、残土の処理について明確にしておかなかったケースがあります。基本的には、費用がかかっても施工会社に処理してもらうのが一般的です。土だけ残されてしまうと処理ができずに、後のトラブルになってしまいます。事前に決めておき、トラブルがないよう進めていきましょう。

監修 一級建築 代表取締役 原 康人氏

株式会社三建コンサル

個人・法人のお客様から土地や建物に関するご相談(空き家、相続、土地建物の売買など)を伺い、ご提案をしながら一緒に解決策を見出しています。建築設計はもちろん、土地の測量、農地転用や市町村の申請書類作成も行っており、「土地から建物の相談役」として皆様のお役に立てるよう努めています。

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