家づくり

憧れのおしゃれなスキップフロア|メリットや注意点

家を建てる際に、限られた空間を有効活用する工夫はいくつかあります。その一つが、デザイン性の高さからも人気を集めている「スキップフロア」です。そのスキップフロアにもメリットとデメリットがありますので、自身の家づくりに必要かどうかを見極められるようにポイントを押さえて紹介していきます。

1.そもそも「スキップフロア」ってなに?

スキップフロアは、同じ階層に段差を設けて擬似的な中二階をつくり出す構造のことです。ドアや仕切りではなく、階段を利用してデッドスペースに生活空間をつくり出すのが特徴となっています。住まいを購入してから後悔しないためにも、まずはメリットとデメリットをそれぞれ把握しておきましょう。

スキップフロアのメリット

建物自体の高さを変えることなく多層空間をつくり出すスキップフロアは、限られたスペースでも間取りを工夫して多くの床面積を確保できるというメリットがあります。日本の住宅地には様々な制限が設けられており、場合によってはマイホームの高さを希望通りに設計できない可能性もゼロではありません。とはいえ、敷地を横に広げていくのはあまり現実的な選択肢とはならないでしょう。そのような場合でも、スキップフロアを活用することで住宅内により多くの生活空間をつくり出すことができるのです。

仕切りを設けずに生活空間を区分けするスキップフロアは、開放感があるだけではなく住宅内の見通しが良くなる点も大きなメリットです。特に小さいお子さんや高齢者のいらっしゃるご家族の場合、安全性の観点から目の届く範囲を広くしておくことは重要と言えるでしょう。コミュニケーションが取りやすくなるので、良好な家族関係を構築しやすい環境になると言えるでしょう。また、広く視界が開けた空間は日常感と非日常感が程良く共存し、それだけでもマイホームをおしゃれに演出してくれるのではないでしょうか。内装やインテリアにこだわってハイセンスな我が家にしたいとお考えの方にとっても、スキップフロアは有効な選択肢となりそうです。

 

住宅内の仕切りが少ないということは、日当たりや風通しの良さにも繋がります。採光性の高さは冬場の暖房効果や洗濯物の乾きやすさなど、快適な暮らしのために重要なポイントとなります。適度に日光を浴びることは自律神経を整える効果も期待できますから、規則正しい生活リズムの維持にも一役買ってくれそうです。風通しの良さは換気の面で有利に働くので、ホコリやハウスダストを室内に溜め込まない環境づくりや、新型コロナやインフルエンザなどのウイルス対策・感染症対策としても有効ですね。

 

加えて、スキップフロアは階段部分の側面あるいは背面を収納スペースとして利用することも可能です。収納容量は階段の段差数や傾斜によってアレンジできるので、衣類・食品・雑貨など幅広い用途に対応します。土地がそれほど広くなくても、スキップフロアを上手に活用することで十分な収納量を確保できるでしょう。

スキップフロアのデメリット

一方のデメリットとしては、まず設計難易度の高さが挙げられます。一般的にスキップフロアは建物の天井高とのバランスが重要であり、いざ建ててみたら中二階の天井が低くて使いにくかったという失敗談も少なくありません。したがって、建築を依頼するハウスメーカーや工務店にスキップフロア設計のノウハウが十分にあるかどうかを見極めることも大切です。施工実績の数や質が1つの指標になりますから、公式ホームページや担当者への問い合わせでチェックしてみてください。

また、スキップフロアには高い施工技術も要求されるため、同程度の敷地面積で一般的な住宅を建てるよりもコストがかかる可能性があります。職人の手間賃や技術費だけではなく材料費などの兼ね合いもあるため、スキップフロアを導入する際はある程度割り切る考え方も重要です。ただし、これに関してはケースバイケースであり、スキップフロアを採用することでむしろコストパフォーマンスが上がる場合もあります。例えば、坂道などの傾斜地に建つ住宅では、十分な居住空間や収納スペースを確保したい場合に地下階層を設けるというアプローチがとられます。地下にスペースをつくり出すには掘削作業や擁壁による補強など、大掛かりな工事が必要となるため工事費が高額になるのが一般的です。その点で言えば、住居内に階層をつくるスキップフロアの方が安く済む可能性が高いと言えるでしょう。

 

費用面で言えば、スキップフロアの導入は固定資産税との兼ね合いも意識しておきたいところです。固定資産税の計算方法は複雑なので詳しくは割愛しますが、スキップフロアに関して言えば、「床面積」と「天井高」が課税対象のポイントとなります。特にスキップフロアの床面積については各自治体で基準が異なるため、地域密着型のハウスメーカーや工務店に相談することをおすすめします。床面積が確保できる点はメリットでもありますが、税金対策との兼ね合いも考慮してみてください。

実際にスキップフロアのある家に暮らしてみると、意外と掃除が面倒だという声も散見されます。スキップフロアは必然的に階段になる箇所が多くなるため、コード付きの掃除機だと取り回しが悪くなりがちです。高低差に対応できないお掃除ロボットもスキップフロアには向いていないと言えます。スキップフロアのある家に住む場合は、比較的持ち運びに便利なコードレス掃除機を使うのが良いでしょう。

2.スキップフロアを採用する際の注意点

スキップフロアのある住宅を購入する場合、意外と見落としがちな注意点が2つあります。住んでみてから「こんなハズじゃなかった」と後悔しないためにも、以下の2点には十分留意しておきましょう。

暑さや寒さ対策が必要

階層間に仕切りを設けないスキップフロアは、擬似的に面積の広いワンルームが住宅内に存在することになります。これは空調効率の低下を意味しており、夏場・冬場のエアコンが心許ない存在になりがちです。暖かい空気は上部に滞留するという性質があるため、一階部分の冷え込みは特に実感が強くなります。エアコンを複数機設置するという方法もありますが、電気代や消費電力のことを考えるとあまり現実的ではありません。スキップフロアがある住宅では良質な断熱材を使用して、室内の熱量を一定に保てるようにするのが基本です。冬場の寒さ対策としては床暖房を取り入れるのも良いでしょう。エアコンによる室温調整効果を上げたい場合は、サーキュレーターやシーリングファンといったツールで上手く空気を循環させてあげるのが有効です。

3.スキップフロアのまとめ

空間の有効活用やデザイン性の向上など、様々なメリットがあるスキップフロアの人気も高まっています。その一方で、実際に住んでみてから気付きがちな落とし穴があるというのもまた事実です。大切なのはメリット・デメリットの双方を家族間で熟考した上で、信頼できる施工業者に依頼するということでしょう。専門家の意見を参考にしながら、理想の住まいを手に入れてくださいね。

 

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監修 野村 綾乃氏

株式会社アンズコミュニケーションズ 代表取締役

大手証券会社のOL を経てラジオ業界に転身。ラジオ番組パーソナリティに。現在の担当番組は、『笠原将弘の賛否両論/東海ラジオ』『市政情報/エフエム岡崎』。番組構成作家を行いながら、住宅ライターとしても住宅系雑誌・WEBサイトでのコラム・取材記事の執筆、監修、講師で活躍中。

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